#02

#02

2025.10.20

アクスラについて

次の文章を読んで、後の問い(問1〜7)に答えよ。なお、設問の都合で表記を一部改めている。

本設問は読解力を査定するものではなく、倫理や一般教養は採点に考慮しない。虚偽や偽証は可とするが、あなた自身の思ったように解答すること。

(配点 50)

問題文は下記に続く。

【ゆっくり解説】特定地域のみで販売されていた謎のジュース⁉︎ いわくつきの清涼飲料水「アクスラ」の謎に迫る【都市伝説】

以下は個人YouTubeアカウント「現代怪奇考察ちゃんねる」に投稿された動画の抜粋、書き起こしである。なお、該当動画は█月█日現在、非公開となっている。

このジュース、何かがおかしい

図-1

猫A

「現代怪奇考察チャンネルへようこそ」

猫B

「このチャンネルでは、巷で話題になっているホラー・オカルト系の話題の解説および考察を行っていくぜ」

(中略)

猫A

「ねぇ、██

猫B

「どうしたんだ、██

猫A

「こう毎日暑いと、喉が乾いてくるわね。なんだかフルーツ系の爽やかなドリンクでも飲みたい気分だわ」

猫B

「それなら、アクスラでもどうだ?」

「覚えてくれたよね?」

猫A

「……」

「いきなりどうしたのよ、██

猫B

「今回取り上げるのは、特定地域で短期間だけ発売されていたという清涼飲料水『アクスラ』についてだぜ」

猫A

「アクスラ? 聞いたことないわね」

猫B

「それもそのはずだぜ。アクスラは████市の一部でのみ展開されていたとされる、いわゆるローカル商品なんだ。██はこの地域に住んでいたことはないよな?」

猫A

「ええ。一度も行ったことがないわ」

猫B

「それに、製造会社の公式ホームページやボトルの写真といった、アクスラに関する情報はほとんどネット上に記録されていない」

猫A

「なら私が知っているわけないわね。会社はもう倒産しているの?」

猫B

「ああ。現在の動向は不明だが、少なくとも飲料産業からは完全に撤退しているぜ」

「そのアクスラだが、現在話題を呼んでいる」

猫A

「どうして?」

猫B

「この動画を見てほしい」

図-2

猫A

「……。なんだか、時代を感じるわね」

「さっき██が言っていた、『覚えてくれたよね』のフレーズが使われてる」

猫B

「ああ。そうだぜ」

猫A

「でも、アクスラは局地的に販売されていたローカル商品だったのよね?」

「そんな企業がテレビCMを打つ予算なんてあるかしら?」

猫B

「特定地域でのみ放送されているCMというものはあるぜ。地方番組のコマーシャル枠とかな」

猫A

「ローカル番組のスポンサーになっていたのかしら?」

「それはさておき、どうして今話題を呼んでいるの? 昭和レトロブームの影響かしら」

猫B

「これは、とあるユーザーがSNSに投稿したポストだ」

図-3

図-3

猫A

「このCMに出てくる『アクスラ』というドリンクを探しています……」

「情報を求めている人がいるのね」

猫B

「ああ。該当の投稿は話題になり、論争を巻き起こしているぜ」

猫A

「論争? どうして?」

猫B

「このCM動画、そして、扱われている商品について、ほとんど誰にも知られていなかったんだ。『アクスラ』を飲んだことがある、と明言するユーザーはまったくいない」

「商品の概要だけでなく、CMに出演している俳優の情報もない。すべてが謎だ」

猫A

「いくらなんでも、ゼロってことなんてありえるかしら」

猫B

「ネットの集合知なんてアテにならないよな。それはさておき、どういうわけか真相を誰も知らない『アクスラ』について、調査する流れができたぜ」

猫A

「確かに気になるわね。ローカルとはいえ、CMを流すほどの商品を誰も覚えてないなんて。でも、どこかに少しくらい情報は残ってないのかしら?」

猫B

「現在わかっていることは3つだ」

猫A

「3つ?」

(中略)

猫B

「まず、アセロラ果汁入りの炭酸飲料だということ」

猫A

「あら? 誰も覚えてないのに、どうしてフレーバーの情報があるのかしら?」

猫B

██にしてはいい着眼点だな。ネット上に、アクスラ製造会社の開発部に所属していたと語る人物による匿名ブログが投稿されたんだ。『アクスラについて』という題目で、さまざまな情報が明かされたぜ」

猫A

「匿名? 信憑性はないわね」

猫B

「まぁな。ただ、このトピックを考察するうえで参考程度にはなると思うぜ」

「ブログによると、『アクスラ』はアセロラ果汁を含みつつ、カフェインの多配合を売りにしたドリンクとして開発されたんだ」

猫A

「ラベルのデザインは昔風だけど、今でもよく見るタイプのジュースね。とくに変わった印象はないわ。アクスラのアはアセロラのアというわけかしら?」

猫B

「そうだろうな。該当地域には大きなアセロラ農園があり、特産品ゆかりの商品だったと憶測できるな。ローカル商品らしいぜ」

猫A

「アセロラの産地というと、日本国内では沖縄県が有名かしら。南方で販売されていたと予想できるわね」

猫B

「ああ。具体的な地域は明言されていないが、少なくとも比較的温暖な地域であったそうだ」

猫A

「どうりで都心部ではいっさい販売されていなかったわけね」

「たしかに、特定地域でしか飲めないドリンクと言われると味が気になるわ。私も飲んでみたいわね」

猫B

「ふふふ……それはどうかな」

「次の話を聞いても、『飲んでみたい』と言えるかな?」

猫A

「なによ、怪しいわね」

「もったいぶってないで、はやく教えなさいよ」

(中略)

猫B

「ふたつめの情報は、アクスラはわずか半年で終売となったということだ」

猫A

「半年? ずいぶん短いわね」

「おいしくなくて売れなかったのかしら」

猫B

「その可能性も否定できないが、いちばんの要因は健康被害によるものだと憶測されているぜ」

猫A

「健康被害? 食中毒や異物(ア)コンニュウなどの、事件を起こしてしまったの?」

猫B

「ああ。匿名ブログによると、アクスラを飲んだ子どもの数名が異常を訴えたそうだ」

猫A

「あら、それは大変ね。販売停止処分となったのかしら」

「でも、そんな騒動を引き起こしたのなら、ニュースになっていないのは不自然よ」

猫B

「そうだな。現在確認できるネット記事や新聞、ニュース番組のアーカイブなどを探ってみても、製造会社やアクスラに関する言及は確認できないぜ」

猫A

「そんなことってあるかしら? いくら小さい企業とはいえ、食中毒は一大事よ」

猫B

「該当ブログでは『健康被害』としか記述されていないが、販売地域で数名の児童が原因不明の失明を訴えた記録が残っているぜ。それらの記録は、アクスラの販売時期と一致するんだ」

猫A

「失明⁉︎ でも、アクスラとの因果関係は証明できるのかしら?」

「市販されている飲み物を飲んで失明なんて、考えにくいわ」

猫B

「ああ。何者かが店舗にある缶、あるいは工場での製造時にメタノール(注1)など失明作用のある成分を混入させたとされているぜ」

猫A

「恐ろしいわね。会社は責任をとって事業から撤退したのかしら?」

猫B

「どうだろうな。そこらへんを断定することはできないぜ」

(中略)

猫B

「3つめ。先ほど、アクスラは特定地域のみで販売されているローカル商品だと言ったが、実のところもっとローカルなものだったんだ」

猫A

「もっとローカル? どういうことよ」

猫B

「アクスラは、特定の町一箇所でのみ局地的に売られていた、ということなんだ」

猫A

「は? ひとつの町だけ?」

「個人店で出してるオリジナルメニューとかならともかく、企業販売の清涼飲料水でそんなことありえないわ」

猫B

「その疑問はもっともだぜ。細かく解説していくと、アクスラの製造会社および工場のあった████市内、旧██町地域では、住人のほとんどが該当の会社の社員であったんだ」

猫A

「TOYOTAで有名な愛知県豊田市などのように、いわゆる企業城下町だったのかしら。大企業を中心に発展した地域のことね」

猫B

「ああ。アクスラをめぐる議論の中で、旧██町の出身者を名乗るユーザーがちらほら現れたぜ。しかし、この町はもう地図上に存在していない。19██年に隣接地だった旧●●●村と合併し、██市として統合されたんだ」

猫A

「あら。そのいざこざで、会社にまつわる情報も失われてしまったのかしら?」

猫B

「まずは地元で局地的に販売し、反響を見てから全国展開することを想定していた、と考えられるな。前述の健康被害事件と町の合併、事実上の消滅と相まって、その計画も頓挫してしまったわけだが」

猫A

「消えた町と正体不明のドリンクか。たかがジュースとはいえ、ミステリアスね」

(中略)

猫B

「ネット上で話題になってからは、アクスラを飲んだことがあるという発言もちらほら見受けられるぜ。カフェインの含有量が多くて受験勉強がてら飲んでいたとか、酸味が強くて苦手な味だったとか、謎のとろみがあって飲みにくかったとかな」

猫A

「なんだか不明瞭ね。とろみ?」

「みんな言ってることが違うわね」

猫B

「いずれも真偽は不明だけどな」

「さぁ、ここからが私の考察だ」

(中略)

猫B

「つまり、(A)アクスラを飲んだ人間は、みな記憶が混濁している」

「それはアクスラの作用によるものなんだ」

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